下垂体茎は3mm以上で肥厚。
下垂体茎肥厚の鑑別は腫瘍性(胚細胞腫瘍、LCH、リンパ腫、転移性病変)と炎症性(下垂体炎、サルコイドーシスなど)に大きく分かれる。
小児では胚細胞腫瘍、LCHなど腫瘍性病変が多い。
下垂体茎肥厚の定義
下垂体茎は成人では視神経レベルで平均2.4mm±0.6mm、下垂体近くで1.9±0.3mm程度。
小児では0-6ヶ月で1.9mm程度。
3mm以上を病的な下垂体茎肥厚とすることが多い。
下垂体茎肥厚の鑑別
腫瘍:胚細胞腫瘍、ランゲルハンス細胞組織球症(LCH)、頭蓋咽頭腫、悪性リンパ腫、転移性病変(肺癌、乳癌など)
炎症:下垂体炎、結核、サルコイドーシス
先天性:ラトケ嚢胞
原因 n=152
先天性 n=13(9%) :異所性神経下垂体部9、正常異型1、ラトケ嚢胞2、下垂体嚢胞1
炎症性 n=30(20%) :神経サルコイドーシス11、ランゲルハンス細胞組織球症7、リンパ球性下垂体炎4、Erdheim Chester病3、GPA2、播種性黄色腫2、ループス脳炎1
腫瘍 n=49(32%) :頭蓋咽頭腫5、下垂体腺腫8、リンパ腫転移9、脳腫瘍転移6、肺腺癌転移3、肺小細胞癌転移5、胚細胞腫瘍6、星状細胞腫4、
原因不明 N=60(39%)
1368人のメタアナリシスでは
悪性腫瘍が45.2%(95% CI, 33.3%-57.8%):胚細胞腫瘍14%(95% CI, 9.2%-20.6%)、LCH10.2%(95 CI%, 6.4%-15.8%)、転移性病変4.7%(95% CI, 2.2%- 9.5%)。
転移性病変では肺がんが最多で44.2%(42/95)、乳がん25.3%(24/95)、リンパ腫9.5%(9/95)の順に多かった。
小児では67.4%が悪性腫瘍で、胚細胞腫瘍26.9%・LCH22.2%が成人に比べて多い。一方小児では転移性病変は1例もなかった。
臨床所見
1368人のメタアナリシスでは
下垂体ホルモン分泌低下の中では中枢性尿崩症が最多で71.9%(95% CI, 55.8-83.7%)。
頭痛22.6%(95% CI, 4.7%-63.1%)、視覚障害18.7%(95% CI, 10.6%-30.9%)、倦怠感13.9%、seizure・意識障害13.2%、食思不振8.3%、嘔吐5.3%、歩行障害2.6%、聴力障害1.3%。
胚細胞腫瘍やLCHにおいて中枢性尿崩症はほぼ必発。他の前葉ホルモンも30-50%程度の確率で障害される。
下垂体茎肥厚へのアプローチ
下垂体茎は3mm以上で肥厚。
下垂体茎肥厚の鑑別は腫瘍性(胚細胞腫瘍、LCH、リンパ腫、転移性病変)と炎症性(下垂体炎、サルコイドーシスなど)に大きく分かれる。
小児では胚細胞腫瘍、LCHなど腫瘍性病変が多い。
〈参考文献〉
Neoplastic Etiology and Natural Course of Pituitary Stalk Thickening. J Clin Endocrinol Metab. 2022;107:563-574. PMID: 34614160.
Pituitary stalk lesions: the Mayo Clinic experience. J Clin Endocrinol Metab. 2013;98:1812-8. PMID: 23533231.
Pituitary stalk lesions: systematic review and clinical guidance. Clin Endocrinol (Oxf). 2016;85:507-21.PMID: 26950774.