腎臓

低カリウム血症

鑑別

経口カリウム製剤

治療

基本的にカリウムは経口摂取で40-80mEq/日程度補充を行うが、K < 2.5mEq/L、経口摂取不良、重篤な症状などがある場合は経静脈的に補充を行う。代謝性アルカローシスでは非Cl含有カリウム製剤は塩化カリウムと比べてカリウム貯留作用が40%と低いため原則として塩化カリウムを投与する。代謝性アシドーシスの症例では重炭酸の前駆体であるグルコン酸やアスパラギン酸を含有している有機酸カリウム製剤を用いる。腎性カリウム喪失に対してはミネラルコルチコイド拮抗薬(スピロノラクトン、エプレレノン)やENaC阻害薬であるトリアムテレンを用いることもある。カリウム不足による低カリウム血症では、血清カリウム0.3mEq/Lの低下は全身のカリウム約100mEqの不足に相当する。カリウムの補充は血清ナトリウム濃度を上昇させるため、重度の低ナトリウム血症を併発している患者の低カリウム血症の補正の際はナトリウムの過補正にならないように注意する。
重度の低カリウム血症の場合は経験的にマグネシウムを経静脈的に補充する。血清マグネシウム濃度は体内のマグネシウム欠乏を必ずしも反映しないため、高Mg血症でない限り補充を行う。

症状・所見

カリウムの動態

70kgのヒトの体内にはカリウムが3000-4000mmol存在する。そのうちの約2%(60-80mmol)が細胞外液、約98%が細胞内に存在する。

一般的な食事ではカリウムを40-120mmol程度摂取する。カリウムをまったく摂取しない場合でも腎臓から15mmol/日程度排泄されるため、低カリウム血症になる可能性は理論上あるが実際は稀である。排便からのカリウム排泄は5-10mmol/日程度だが、下痢になると最大256mmol/日程度までカリウムが排泄されるため、下痢や下剤乱用は低カリウム血症の重要な鑑別となる。

細胞内外シフト

腎排泄

カリウムの摂取量に関わらず、濾過されたカリウムの約90%が近位尿細管とヘンレの上行脚で再吸収される。よってカリウムの尿中排泄はアルドステロン感受性の遠位ネフロンにおける残り10%のカリウムの再吸収によって主に決定される。

遠位ネフロンによるカリウム分泌の仕組み

①アルドステロンはミネラルコルチコイド受容体(MR)を介してENaCの発現量と開口確率の両方を増加させる。 ②Na+がENaCで再吸収されて、管内が陰性荷電になる。③電気的勾配に従ってK+ROMKから分泌される。

Na+は主にサイアザイド感受性のNCCチャネル介して再吸収される。高K血症ではKir4.1-5.1 チャネルを通して細胞内へのCl流入を促しNCCからのNa+再吸収を抑制する。管内のNa+が増加しK+排泄が亢進する。低K血症では逆の機序でK+排泄が低下する。

Mg2+はROMKを抑制している。低Mg血症ではROMKの抑制がなくなり、持続的にK+が分泌されてしまう。よって低Mg血症が治療されるまで低カリウム血症は治療抵抗性となる。 重度の低K血症の治療の場合は経験的にMg2+を補充する

〈参考文献〉
Physiology and Pathophysiology of Potassium Homeostasis: Core Curriculum 2019. Am J Kidney Dis. 2019 ;74:682-695. PMID: 31227226.
Pathophysiology and management of hypokalemia: a clinical perspective. Nat Rev Nephrol. 2011;7:75-84.1 PMID: 21278718.
Potassium homeostasis and management of dyskalemia in kidney diseases: conclusions from a Kidney Disease: Improving Global Outcomes (KDIGO) Controversies Conference. Kidney Int. 2020;97:42-61. PMID: 31706619.

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guni
総合内科と内分泌代謝科で修行中。日々勉強したことを投稿しています。 皆様の参考になればと思います。役に立ったらシェアをお願いします。間違いがあればご指摘下さい。 臨床に応用する場合は自己責任でお願いします。