腎臓

代謝性アシドーシス

アニオンギャップ開大性代謝性アシドーシス

乳酸 ②ケトン体 ③腎不全 ④薬剤性をまず考える。

内因性酸産生増加

 L乳酸アシドーシス(ショック、けいれん、敗血症、ビタミンB1欠乏、薬剤性など)
 D乳酸アシドーシス(短腸症候群)
 ケトアシドーシス(糖尿病、アルコール、飢餓)
 末期腎不全

外因性酸投与

 メタノール、エチレングリコール、サリチル酸、シアン化合物

薬剤性乳酸アシドーシス

 アセトアミノフェン、リネゾリド、テオフィリン、メトホルミン、5-FU、イソニアジド

GOLDMARK(語呂合わせ)

Glycolグリコール(エチレン、プロピレン、ジエチレングリコール)
5-Oxoproline5-オキソプロリン(アセトアミノフェン)
L-Lactic acidosisL乳酸アシドーシス
D-Lactic acidosisD乳酸アシドーシス(短腸症候群)
Methanolメタノール
Aspirinアスピリン
Renal failure腎不全(GFR < 20mL/min)
Ketoacidosisケトアシドーシス(糖尿病、アルコール、飢餓)

浸透圧ギャップ

浸透圧ギャップ = 血漿浸透圧(実測値) – 血漿浸透圧(計算値)
血漿浸透圧(計算値) = 2 x [Na+] + BUN / 2.8 + 血糖値 / 18
浸透圧ギャップが10以上の場合は浸透圧ギャップありと判断する。
浸透圧ギャップを伴うアニオンギャップ開大性代謝性アシドーシスでは以下を疑う。
 アルコール中毒(メタノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール)
 イソプロパノール中毒
 サリチル酸中毒
 ケトアシドーシス
ケトアシドーシスはアセトン上昇に伴い浸透圧ギャップを伴うことがある。特にアルコール性ケトアシドーシスにみられることが多いので、他の中毒と誤診しないように注意する。

アニオンギャップ非開大性代謝性アシドーシス

下痢 ②尿細管性アシドーシス ③腎不全 ④薬剤性をまず考える。

重炭酸(HCO3)の喪失

 腎臓:近位尿細管性アシドーシス、アセタゾラミド
 消化管:下痢、回腸導管、絨毛腺腫
 その他:ケトアシドーシス治療後、トルエン(シンナー)中毒

腎の酸排泄低下

 遠位尿細管性アシドーシス、高カリウム血症性尿細管性アシドーシス、腎不全(GER < 20mL/min)

Cl過剰負荷

 生理食塩水の大量投与 

HARD UP(語呂合わせ)

Hyperalimentation:高カロリー輸液
Acetazolamide:アセタゾラミド
Renal tubular acidosis:尿細管性アシドーシス
Diarrhea:下痢
Diuretics:利尿剤
Dilutional acidosis:希釈性アシドーシス(生理食塩水大量輸液)
Ureteroenteric fistula:回腸導管
Pancreatic fistula:膵液瘻

尿アニオンギャップ

尿アニオンギャップ = 尿Na+ + 尿K+ – 尿Cl
 尿アニオンギャップ < 0 :腎臓外が原因(下痢、生理食塩水大量投与)
 尿アニオンギャップ > 0 :腎臓が原因
代謝性アシドーシスでは近位尿細管におけるアンモニアの産生が亢進し、酸の排泄が亢進するため尿中アニオンギャップは負の値となる。尿アニオンギャップは腎臓からのアンモニウム排泄量を推定できるため、アニオンギャップ非開大性代謝性アシドーシスの原因が腎臓か腎臓外かの判別に使える。尿アニオンギャップは通常30-50mmol/Lの範囲で正の値をとる。代謝性アシドーシスになると腎臓でのアンモニウム産生が通常の30-40mmol/日から200mmol/日以上に増える。

カリウムによる鑑別

アニオンギャップ

測定される陽イオン(Na+) + 測定されない陽イオン = 測定される陰イオン(Cl + HCO3) + 測定されない陰イオンである。
よってアニオンギャップ(AG) = Na+ – Cl – HCO3 = 測定されない陰イオン(Alb、HPO42-、SO42-、乳酸) – 測定されない陽イオン(K+、Ca2+、Mg2+、H+)

HaMBLE アニオンギャップが低下する病態の語呂合わせ

Hypoalbuminemia:低アルブミン血症(1g/dL低下するごとにAGは2.5mEq/L低下する)
Myeloma:多発性骨髄腫
Bromide:ブロム中毒(®ナロンエース、®ウット)
Lithium:リチウム中毒
Electrolytes:高Ca血症、高Mg血症、高K血症

代謝性アシドーシスの影響

急性の代謝性アシドーシスでは心拍出量の低下、白血球機能障害、低血圧、カテコラミン抵抗性、インスリン抵抗性、ヘモグロビンへの酸素結合の変化などが起きる。
慢性の代謝性アシドーシスではアルブミン産生の低下、インスリン抵抗性、骨・筋肉・腎臓への影響が起きる。

〈参考文献〉
Metabolic acidosis: pathophysiology, diagnosis and management. Nat Rev Nephrol. 2010;6:274-85. PMID: 20308999.
Approach to Patients With High Anion Gap Metabolic Acidosis: Core Curriculum 2021. Am J Kidney Dis. 2021 ;78:590-600.PMID: 34400023.
Non-Anion Gap Metabolic Acidosis: A Clinical Approach to Evaluation. Am J Kidney Dis. 2017;69:296-301. PMID: 28029394.
GOLD MARK: an anion gap mnemonic for the 21st century. Lancet. 2008;372:892. PMID: 18790311.

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guni
総合内科と内分泌代謝科で修行中。日々勉強したことを投稿しています。 皆様の参考になればと思います。役に立ったらシェアをお願いします。間違いがあればご指摘下さい。 臨床に応用する場合は自己責任でお願いします。