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Eagle症候群 茎状突起過長症候群

嚥下時の頸部痛、顔面痛の精査でEagle症候群疑いの方がいたので勉強。

概要

明確な定義はないが、一般的に3cm以上の茎状突起を過長茎状突起とされる。
過長茎状突起による頚部痛咽頭異常感嚥下障害を3徴とする。
1937年に耳鼻科医のEagle WWが初めて報告した。
咽頭刺激による片側性の咽頭痛が最も多い症状だが、隣接する神経(顔面神経、耳介側頭神経、舌神経、舌咽神経、舌下神経、交感神経など)や血管(内頚・外頸動脈)を圧迫することにより様々な症状を呈し、Horner症候群、繰り返す失神、脳梗塞を起こすことがある。
40-50代の中年に多く、症候性となるのはやや女性に多い

過長茎状突起の疫学

人口の4.0~7.3%に過長茎状突起は認められる。
そのうち痛みを訴えるのは4.0-10%のみとされるため、過長茎状突起があるからといって必ずしも症状を伴うわけではないので注意が必要。

過長茎状突起の原因

原因は不明。先天性、茎状舌骨靭帯の石灰化、茎状舌骨靭帯付着部の骨増生などが考えられている。

茎状突起の解剖

茎状突起は側頭骨下面で茎乳突孔の前方に隣接する円柱状の骨性突出であり、咀嚼や嚥下の役割を担う筋や靭帯が付着する。通常の長さは2.5cm程度。

症状

近接する神経血管への圧排、刺激によって惹起されると考えられている。
顔面痛頚部痛(とくに頸部回旋時)、嚥下時痛嚥下困難咽頭部違和感舌伸展時の疼痛耳鳴・耳痛などが代表的症状。茎状突起の長さと症状の程度の相関を示す報告はない。
通常茎状突起は触知困難だが、扁桃窩を介して触知する場合は過長茎状突起を疑う。
過長茎状突起の触知により症状が誘発されうる
32例の報告では平均年齢46歳(範囲29-70歳)、平均BMI26.1(範囲19.0-39.1)、女性68.8%、茎状突起の長さは平均4.5cm(範囲2.3-8.0cm)。

合併症

Horner症候群
内頚動脈・外頸動脈圧迫・解離によるTIA、失神、脳卒中

画像

単純エックス線写真よりCTによる診断が確実。

治療

まずは鎮痛薬で保存的治療を行う。
局所麻酔やステロイド注入を行っている報告もある。
改善が得られない場合に手術を検討する。

〈参考文献〉
Eagle syndrome: A comprehensive review. Clin Neurol Neurosurg. 2017 Aug;159:34-38. PMID: 28527976.
Eagle’s Syndrome. N Engl J Med. 2017;377:e18. PMID: 28953433.
Surgical Management of Stylohyoid Pain (Eagle’s) Syndrome: A 5-Year Experience. Ann Otol Rhinol Laryngol. 2019;128:220-226. PMID: 30525923.
総合診療 Vol31 No6 2021-June Case45
Eagle 症候群(茎状突起過長症)の画像診断. 耳展 57:3;160-162, 2014
過長茎状突起症(Eagle 症候群)耳鼻 55:46-48, 2009
ネッター解剖学

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guni
総合内科と内分泌代謝科で修行中。日々勉強したことを投稿しています。 皆様の参考になればと思います。役に立ったらシェアをお願いします。間違いがあればご指摘下さい。 臨床に応用する場合は自己責任でお願いします。