内分泌

傍糸球体細胞腫 レニノーマ

網膜出血を伴う若年男性の高血圧、低カリウム血症、高レニン血症の方で、レニン産生腫瘍が鑑別となったので勉強。

概要

傍糸球体細胞腫(レニノーマ)はレニン産生細胞である腎臓の傍糸球体細胞から発生する腫瘍著明な高血圧低カリウム血症を伴うことが多い。レニン活性・レニン濃度高値の二次性高血圧では腎血管性高血圧と本疾患の鑑別が必要となる。腎外性のレニン産生腫瘍としては肺癌、膀胱癌、膵癌、卵巣腫瘍、副腎腫瘍などの報告がある。

疫学

非常に稀な疾患であり、200例以下の報告のみ。
若年から中年に多く、平均発症年齢は27歳(範囲6-69歳)。
男女比は1:2で女性に多い

アルドステロン症の鑑別

レニン低値・アルドステロン正常~高値

原発性アルドステロン症(片側性、両側性、家族性)
偽性アルドステロン症Ⅱ型(Gordon症候群)

レニン高値・アルドステロン高値

循環血漿量減少
妊娠
腎血管性高血圧
レニン産生腫瘍

レニン低値・アルドステロン低値

Cushing症候群
偽性アルドステロン症
先天性副腎皮質過形成(17α水酸化酵素欠損症、11β水酸化酵素欠損症)
AME症候群
Liddle症候群

レニノーマの鑑別

上記のように高レニン血症を伴う場合は、循環血漿量減少と妊娠などを否定したあとに、まずは腎血管性高血圧の鑑別を行う。腎血管性高血圧は高血圧の1-5%、若年性高血圧の原因の5.4%を占めるcommonな二次性高血圧の原因である。鑑別のために腎動脈超音波、CTA、MRAを行う。腎血管性高血圧が否定的な場合はレニン産生腫瘍を疑う。

所見

頭痛

頭痛が最も症状であり、約半数に認める。
その他の症状としては嘔気、頻尿・夜尿、口渇感、倦怠感などの報告がある。

高血圧

75例の平均血圧は201/130mmHg(146-300mmHg/90-180mmHg)、平均罹病期間は47ヶ月(範囲0-23年、中央値24ヶ月)。ACE阻害薬やARBが著効することが多い。

低カリウム血症

58例のデータでは、低カリウム血症は81%の症例に認められた。
降圧剤によってカリウム値は影響を受けるため、低カリウム血症がなくても否定はできない。

高血圧の合併症

高血圧による臓器障害はよく認められる。
網膜症24%、乳頭浮腫6%、蛋白尿11%、腎不全3%、左心肥大7%。

PRA・PRC・PAC

平均のPRAは33.3ng/mL/h(範囲2.8-150.9ng/mL/h)。正常範囲の10倍程度になることが多い。一方で、PACは半分程度が正常範囲内となる。

画像検査

腫瘍径は0.2-9cmで平均3cm
CTでは実質と等信号で、造影はあまりされない
MRIではT1強調画像で低信号、T2強調画像で高信号を示すことが多いが様々。

腎静脈サンプリング

PRAのLR1.5が左右差の指標として一般的に用いられる。
 LR 1.1:感度100%、特異度62%
 LR 1.2:感度85%、特異度75%
 LR 1.5:感度56%、特異度95%
検査の前に適切な準備を行わない場合は感度は56%と低い。
・RAS関連の降圧薬は2週間前から中止する
・4日前から減塩食(4g/日)
・検査日は起床せず、臥位のまま検査を行う
・左腎静脈・右腎静脈・IVC/末梢から2検体採取する
・エナラプリルを静注する(本邦では注射製剤なし)
・20分後に上記と同様に検体を採取する

治療

部分的腎切除術がゴールドスタンダード。
術後速やかにPRA・PACは低下する。

病理

類円形の細胞で好酸性の細胞質と異型が少ない卵円形の核をもつ。
免疫染色ではCD34、レニン、ビメンチンが陽性となる。
電子顕微鏡所見の菱形の結晶構造は特徴的な所見。

〈参考文献〉
Reninoma: case report and literature review. J Hypertens. 2008;26:368-73. PMID: 18192852.
日泌尿会誌 105(4):202~206,2014
Approach to the patient: reninoma. J Clin Endocrinol Metab. 2023:dgad516. PMID: 37647894.

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guni
総合内科と内分泌代謝科で修行中。日々勉強したことを投稿しています。 皆様の参考になればと思います。役に立ったらシェアをお願いします。間違いがあればご指摘下さい。 臨床に応用する場合は自己責任でお願いします。