HIV患者の中枢神経病変の鑑別は主に
- 結核性髄膜炎
- 進行性多巣性白質脳症(PML)
- トキソプラズマ脳症
- クリプトコッカス髄膜炎
- サイトメガロウイルス(CMV)脳症
- 中枢神経原発悪性リンパ腫(PCNSL)
CD4陽性細胞数によって罹患リスクが変わってきます
400以下:結核性髄膜炎(通常200以下)
200以下:トキソプラズマ(通常100以下)、PML(通常150以下)、クリプトコッカス(通常100以下)
150以下:CMV脳症(通常50以下)
中枢神経原発悪性リンパ腫(通常100以下)
基本的に必要な検査は下記です
血液検査
CD4カウント,トキソプラズマIgG抗体(血液,尿,髄液),QFT
造影CT・MRI
髄液検査
細菌・真菌・抗酸菌培養 WBC,蛋白,糖
細胞診・フローサイトメトリー
PCR JCウイルス・EBV・CMV・トキソプラズマ・HSV1,2・VZV
クリプトコッカス抗原
墨汁染色(クリプトコッカス)、抗酸菌染色(結核)
トキソプラズマ・CMV・クリプトコッカスは日単位の経過
PML・リンパ腫・結核・HSVは週単位の経過
PMLとリンパ腫で発熱は稀
トキソプラズマ・PML・リンパ腫は局所神経脱落症状を呈しやすい
トキソプラズマ・クリプトコッカス・結核は髄液糖が低下しうる
高い髄液圧はクリプトコッカスを示唆する
トキソプラズマ・リンパ腫はmass effectを呈しやすい
トキソプラズマはリングエンハンスメントを呈し,前頭葉・基底核・頭頂葉に病変をつくりやすい.
PMLは多発する白質病変で皮質はSpareすることが多い.
リンパ腫は強く造影される.3cm以上あることが多い.
CMVは脳室周囲に病変をきたしやすい.50%の症例は画像正常.
クリプトコッカスは多発性で基底核を侵しやすい.”punched-out”嚢胞病変が多い.
日本ではなかなか遭遇する機会は少なそうですが,いざというときのために知っておきましょう.
参考文献
Tan IL. HIV-associated opportunistic infections of the CNS. Lancet Neurol. 2012;11:605-17. PMID: 22710754.
Bowen LN. HIV-associated opportunistic CNS infections: pathophysiology, diagnosis and treatment. Nat Rev Neurol. 2016 ;12:662-674. PMID: 27786246.