肛門生殖器や口腔咽頭に小水疱膿疱・潰瘍を認めた場合はサル痘を疑う。
皮疹の出現前に発熱・リンパ節腫脹・頭痛・咽頭痛などを認めることが多い。
現在は男性同性愛者における感染例の報告がほとんどである。
はじめに
サル痘は1970年に初めてコンゴ民主共和国においてヒトへの感染が報告されたオルソポックスウイルス属のサル痘ウイルスによる感染症。アフリカにおいて散発的に流行があったが、それは自然宿主(とくにげっ歯類)と接触した場合が多かった。ところが2022年5月に5大陸、50ヶ国以上において3000例以上の症例が報告されるようになり、WHOが7月23日が警告を発した。今回の流行ではゲイ(男性同性愛者)における感染が多い。今回2022年4月24日から7月24日に16ヶ国43施設で診断された528名のサル痘患者における臨床的特徴が報告された。
患者背景
患者の年齢の中央値は38歳。診断1ヶ月前の海外渡航歴は28%(そのうち欧州が90%を占める)。曝露が明らかであった23名において潜伏期間の中央値は7日だった(範囲3-20日)。
症状・所見
皮疹の画像
診断
診断はサル痘ウイルスのPCRが陽性となること。
治療・予後
5%が抗ウイルス薬(Cidofovir、Tecovirimat)の投与をうけた。
13%(70名)が入院を要した。入院理由は疼痛管理21名(主に重度の肛門痛)、軟部組織感染の合併18人、咽頭痛による経口摂取不良5名、眼病変2名、AKI2名、心筋炎2名、感染管理目的13名だった。重篤な合併症として心筋炎が2名、喉頭蓋炎が1名発生した。死亡例はひとりもいなかった。
ほとんどのサル痘は軽症で基本的に自然軽快する。ヒトにおける抗ウイルス薬の有用性ははっきりしないが、動物やケースレポートでは有用性が報告されている。
肛門生殖器や口腔咽頭に小水疱膿疱・潰瘍を認めた場合はサル痘を疑う。
皮疹の出現前に発熱・リンパ節腫脹・頭痛・咽頭痛などを認めることが多い。
現在は男性同性愛者における感染例の報告がほとんどである。
〈参考文献〉
Monkeypox Virus Infection in Humans across 16 Countries – April-June 2022. N Engl J Med. 2022;387:679-691. PMID: 35866746.
Monkeypox Genital Lesions. N Engl J Med. 2022;387:66. PMID: 35704421.