原発性胆汁性胆管炎に尿細管間質性腎炎・Fanconi症候群が合併することがある
Fanconi症候群の特徴は尿糖・汎アミノ酸尿・低リン血症・低カリウム血症
骨痛の精査で低リン血症・くる病を診断したときに原疾患としてPBCも考慮
〈概念〉
原発性胆汁性胆管炎(PBC)の33%に遠位尿細管性アシドーシス(dRTA)を合併するが、臨床的に問題にならないことが多い。
PBCは稀に尿細管間質性腎炎(TIN)とFanconi症候群を起こす。
PBCの初期に起こるので肝臓の異常は目立たないことが多い。
生検でTINが診断されたPBC患者の75%(12/16)にFanconi症候群が合併していた。
56%(9/16)の患者がALPが上昇していないかった。
つまり原因不明の尿細管間質性腎炎・Fanconi症候群を診た場合は抗ミトコンドリア抗体提出を考慮する。
〈検査〉
ALP上昇56%
IgM上昇
抗ミトコンドリア抗体陽性(M-2抗体)
Fanconi症候群の検査異常
尿糖、汎アミノ酸尿、低リン血症、高クロール性代謝性アシドーシス、低カリウム血症、低尿酸血症、低カルニチン血症。
Fanconi症候群の臨床的特徴
くる病・骨軟化症、発育遅延、多尿症、脱水、低分子蛋白尿、筋力低下
診断のきっかけは低カリウム血症、骨痛・骨折、尿検査異常
追記 2021/4/21
IgMPC-TIN(IgM-positive plasma cell-tubulointerstitial nephritis)
2017年に福井大学病院から提唱された疾患概念。
IgG陽性の形質細胞浸潤がTINでは一般的な所見。
IgM陽性の形質細胞浸潤TIN (IgMPC-TIN)
21786人の腎生検データで13人のIgMPC-TINがいた。(13/21786,0.06%)
92%(12/13)が女性。平均年齢は51±9歳(38-66歳)。
全員血清IgM上昇(369-2045mg/dL)。M蛋白陰性。全員d-RTAあり、92%がFanconi症候群。82%が抗ミトコンドリア抗体 or 抗M2抗体陽性。
46%(6/13)がPBCの診断基準を満たす。ALP上昇が8人、γGTP上昇が6人。31%(4/13)がシェーグレン症候群の診断。15%(2/13)に低補体血症。
IgMPC-TINとPBC、SjSでは下図のような関係が示されている。
原発性胆汁性胆管炎に尿細管間質性腎炎・Fanconi症候群が合併することがある
Fanconi症候群の特徴は尿糖・汎アミノ酸尿・低リン血症・低カリウム血症
骨痛の精査で低リン血症・くる病を診断したときに原疾患としてPBCも考慮
〈参考文献〉
Komatsuda A. Tubulointerstitial nephritis and renal tubular acidosis of different types are rare but important complications of primary biliary cirrhosis. Nephrol Dial Transplant. 2010 Nov;25(11):3575-9.PMID: 20466658.
Saeki T. Tubulointerstitial nephritis and Fanconi syndrome in a patient with primary Sjögren’s syndrome accompanied by antimitochondrial antibodies: A case report and review of the literature. Mod Rheumatol. 2018 Sep;28(5):897-900. PMID: 27142563.
Foreman JW. Fanconi Syndrome. Pediatr Clin North Am. 2019 Feb;66(1):159-167. PMID: 30454741.
Takahashi N. Tubulointerstitial Nephritis with IgM-Positive Plasma Cells. J Am Soc Nephrol. 2017 Dec;28(12):3688-3698. PMID: 28794148 .