CT所見と低カリウム血症の有無で片側性PAと両側性PAの可能性を推測する。
CTで片側性の結節があり低カリウム血症を合併する場合は7割が片側性PAであり、手術加療を目指しAVSを積極的に考慮する。
CTで結節がなく、カリウム正常の場合は両側性PAの可能性は94%であり、AVSを回避し薬物加療を行うことも選択肢となる。
〈概念〉
原発性アルドステロン症(PA)において手術加療を検討する際に副腎静脈サンプリング(AVS)が病型分類のためにガイドラインでは推奨されている。AVSは限られた施設でしか施行が難しく、侵襲的でコストもかかる。
CT所見と低カリウム血症の有無で病型分類を予測できないか検討がなされた。
日本の28施設(大学病院15施設、市中病院13施設)において、2006年1月から2016年10月までにAVSが施行された20-90歳のPA患者1591人。Webレジストリーシステムを用いて情報を収集。1mgデキサメタゾン抑制試験で血中コルチゾール>3μg/dLを満たすコルチゾール自律分泌を疑う患者は除外された。
血中カリウム値<3.5mEq/LをPA診断前もしくは診断時に認めたもの、もしくはカリウム補充を受けているものを低カリウム血症と判定した。
すべての患者にthin-slice(1~3mm)副腎CTを施行。10mm以上のものを結節と判定し、それぞれ片側病変(654人)、両側正常(899人)、両側病変(38人)の3群に分けられた。
両側病変は数が少なかったため、解析の際に除外された。
CT所見とAVSの結果
CTで片側病変と判定された場合のAVS一致率は45.4%で、片側病変は50.8%だった。
→片側結節患者において実際にその結節がアルドステロン産生腺腫である可能性は半分以下しかない。
CTで両側正常と判定された場合の一致率は85.4%で、片側性PAは14.6%ほど。
→CTで10mm以上の結節がない場合は8割以上が両側性PA。
カリウム値とAVSの結果
低カリウム血症を認めた場合、片側性PAを58.4%に認める。
低カリウム血症がない場合、片側性PAは11.5%のみ。
逆に低カリウム血症は片側性PAの77.1%に認め、両側性PAの場合は23.9%のみ。
CT所見とカリウム値とAVSの結果
CTで片側病変&低カリウム血症→70.6%で片側性PA
CTで片側病変&カリウム正常→23.8%で片側性PA
CTで両側正常&低カリウム血症→38.1%で片側性PA
CTで両側正常&カリウム正常→6.2%で片側性PA
これらからCTで片側病変&低カリウム血症の場合は片側性PAの可能性が7割あるため、積極的なAVSと手術加療が検討される。一方CTで両側正常&カリウム正常の場合は約95%が両側性PAであり手術適応とならないため、AVSを回避しMR拮抗薬による薬物治療を積極的に検討するほうがよいだろう。
ガイドラインでは35歳以下かつCTで片側病変&低カリウム血症の場合はAVSを省略して手術可能となっているが、本研究において上記条件を満たす患者はすべて片側性PAであった。
一方、CTで両側正常&カリウム正常の患者でPAC<8ng/dLの場合はすべて両側性PAだった。
AVSは患者さんにとって大きな負担となる。これらのデータは手術を前提にAVSを行うか、AVSを行わず薬物加療を行うか選択する際の説明に非常に有用と思われる。
CT所見と低カリウム血症の有無で片側性PAと両側性PAの可能性を推測する。
CTで片側性の結節があり低カリウム血症を合併する場合は7割が片側性PAであり、手術加療を目指しAVSを積極的に考慮する。
CTで結節がなく、カリウム正常の場合は両側性PAの可能性は94%であり、AVSを回避し薬物加療を行うことも選択肢となる。
〈参考文献〉
Significance of Computed Tomography and Serum Potassium in Predicting Subtype Diagnosis of Primary Aldosteronism. J Clin Endocrinol Metab. 2018 ;103:900-908. PMID: 29092077.