消化器

漢方による腸間膜静脈硬化症 mesenteric phlebosclerosis

〈まとめ〉
(山梔子を含む)漢方を長期間服用している患者に消化器症状を認めた場合に腸間膜静脈硬化症を考える

〈概念〉
大腸壁内から腸間膜の静脈に石灰化が生じ、静脈還流の障害によって、 腸管の慢性虚血性変化をきたす疾患で、静脈硬化性大腸炎(phlebosclerotic colitis)とも呼ばれる。近年山梔子(サンシシ)を含有する漢方薬の長期服用(5年以上)が原因の一つとして注目されている。
加味逍遥散による報告が最も多く、次いで黄連解毒湯,辛夷清肺湯など。

〈機序〉
サンシシ中のゲニポシドが大腸の腸内細菌によって加水分解され、生成されたゲニピンが大腸から吸収されて腸間膜静脈を通って肝臓に到達する間に、アミノ酸やたんぱく質と反応し、青色色素を形成するとともに、腸間膜静脈壁の線維性肥厚・石灰化を引き起こし、血流を鬱滞させ、腸管壁の浮腫・線維化・石灰化・腸管狭窄を起こすと考えられている。

〈症状〉
主に腹痛(右側)下痢腹部膨満、悪心・嘔吐が認められるが、無症状(便潜血陽性を含む)の症例も2割程度ある。また、症状の重いものではイレウスを呈する場合もある

〈検査〉
大腸内視鏡
 右側結腸を中心とした粘膜の色調変化(暗紫色、青銅色など)、浮腫、血管透見消失、半月襞の腫大、伸展不良、管腔狭小、びらん・潰瘍など


注腸X線
 ハウストラ消失、拇指圧痕像、管腔狭小化、辺縁の鋸歯状変化、硬化像、粘膜粗慥、バリウム斑など

単純X線/CT
 右側結腸を中心とした大腸壁あるいは腸間膜静脈に沿った線状,点状の石灰化(91.2%)

病理組織
  静脈壁の著明な線維性肥厚と石灰化、粘膜固有層の著明な膠原線維の血管周囲性沈着、粘膜下層の高度の線維化など

〈診断〉
手術例では病理組織所見が根拠となる。 臨床的には特徴的な内視鏡所見と生検所見、あるいは内視鏡所見とCTによる腸管壁や腸間膜静脈の石灰化が確認できた場合に本症と診断されるのが通例

〈治療〉
漢方薬の中止
 予後は基本的に良好で自覚症状は改善するが、線維化・石灰化の改善には長期間を要する.

〈まとめ〉
(山梔子を含む)漢方を長期間服用している患者に消化器症状を認めた場合に腸間膜静脈硬化症を考える

〈参考文献〉
漢方薬による腸間膜静脈硬化症 – 日本漢方生薬製剤協会

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guni
総合内科と内分泌代謝科で修行中。日々勉強したことを投稿しています。 皆様の参考になればと思います。役に立ったらシェアをお願いします。間違いがあればご指摘下さい。 臨床に応用する場合は自己責任でお願いします。