内分泌

インスリノーマ

疫学

インスリノーマはインスリンの自律性分泌を特徴とする膵β細胞由来の機能性腫瘍。
膵機能性内分泌腫瘍の中では最も多く61%を占める。
発症率は3.27/100万人悪性が約10%MEN-1関連が約6%
平均診断年齢は良性:66歳(49-76)、悪性:55.5歳(43-67)と悪性の方が若い。
発症から診断まで平均1.5年
約98%が膵臓に存在(残りの2%は十二指腸壁にあることが多い)。
90%が2cm以下(<1cm40%、<1.5cm66%、<2cm90%)
MEN-1関連の場合は若年発症かつ多発・悪性であることが多い。

症状

慢性的に低血糖であることが多いため動悸・発汗・振戦などの交感神経刺激症状よりも頭痛・めまい・視覚異常・記憶障害・異常行動・痙攣・昏迷など神経学的症状が目立つことが多い。
インスリノーマは空腹時血糖が有名。空腹時血糖のみが73%、食後低血糖のみが6%、両方が21%
低血糖を回避するため間食が習慣になっていることも多く、体重増加も症状の1つ。

検査

低血糖時のインスリン・Cペプチドが適切に抑制されていないことを証明することが重要。
低血糖を捉えることが出来ない場合は72時間絶食試験(食後低血糖の場合は混合食試験)を実施する。

72時間絶食試験

①最後に食事を取り終えたときを始まりとする。すべての内服薬を中止する。
②カロリーなし、カフェインなしの飲み物のみ可とする
③日中は活動を勧める
6時間毎の血清中の血糖、インスリン、C-ペプチド、プロインスリン(保険適応外にて最終のみ)を測定
 血糖値が60以下になるまで繰り返し、それ以降は1〜2時間毎に測定する
血糖値が45以下で、低血糖症状を呈した時点で絶食を終了とする
絶食の最後に、血清中の血糖、インスリン、C-ペプチド、プロインスリン、3-ヒドロキシ酪酸、スルホニル尿素(本邦では測定不可)を測定し、その後グルカゴン1mg静注し、その10分、20分、30分後に血糖値を測定する
⑦ホルモン欠損を疑う場合は、コルチゾール、GH、グルカゴンを絶食の最初と最後に測定する
低血糖発作時(血糖55mg/dL未満、特異度を高めるためには45mg/dL未満)のIRI>3μU/mL、CPR>0.6ng/mL、グルカゴン静注後に血糖上昇>25mg/dLであればインスリノーマの可能性が高い
42.5%が12時間66.9%が24時間94.5%が48時間時点で絶食試験を終了できる。

画像検査

インスリノーマが疑わしい場合は画像検査で局在検査を行っていく。

腹部超音波、CT、MRIなど非侵襲的検査で約8割の患者で膵腫瘍が見つかるが、見つからない場合はEUSが推奨される。EUS-FNAで病理的に診断をつけることもできる。
68Ga-DOTATATE PET/CTやGLP-1受容体画像(111In-DOTA-exendin-4)の有用性も報告されているが本邦では施行できない。

選択的動脈内カルシウム刺激試験(SACST selective arterial calcium stimulation test)

正常β細胞には発現していないカルシウム感受性受容体がインスリノーマの腫瘍細胞において発現していることを利用する。SACSTの陽性率は90-95%と報告されている。

右肝静脈にカテーテルを留置した後、グルコン酸カルシウム(®カルチコール:0.05mL/kg)を胃十二指腸動脈上腸間膜動脈脾動脈からそれぞれ選択的に注入する。
 右肝静脈内の留置カテーテルから静脈血を採取(動注前、動注後20秒、40秒、60秒、90秒、120秒)し、インスリン濃度を測定する。
 刺激後にインスリン濃度が前値と比べ2倍以上の上昇がみられた場合、注入動脈の支配領域にインスリノーマが存在すると診断する。

SACSTは膵島の過形成である膵島細胞症(nesidioblastosis)との鑑別にも有効と報告されている。

診断アルゴリズム

治療

インスリノーマの治療の第一選択は外科的切除
悪性・局在不明・手術不能例の薬剤治療としてジアゾキシド、ランレオチド、エベロリムスなどが使用される。

予後

非MEN1では10年で5%、20年で7%が再発。
MEN1では10−20年で21%が再発する。

悪性インスリノーマの10年生存率は29%。最も多い転移や再発部位は肝臓所属リンパ節

〈参考文献〉
膵・消化管神経内分泌腫瘍(NEN)診療ガイドライン 2019年【第2版】
Clinical characteristics and incidences of benign and malignant insulinoma using a national inpatient database in Japan. J Clin Endocrinol Metab. 2021:dgab559. PMID: 34343300.
Secular trends in the presentation and management of functioning insulinoma at the Mayo Clinic, 1987-2007. J Clin Endocrinol Metab. 2009;94:1069-73. PMID: 19141587.
Forty-eight-hour fast: the diagnostic test for insulinoma. J Clin Endocrinol Metab. 2000;85:3222-6. PMID: 10999812.
Surgical Management, Preoperative Tumor Localization, and Histopathology of 80 Patients Operated on for Insulinoma. J Clin Endocrinol Metab. 2019;104:6129-6138. PMID: 31369096.
Insulinomas: localization with selective intraarterial injection of calcium. Radiology. 1991;178:237-41. PMID: 1984311.
Selective Arterial Calcium Stimulation With Hepatic Venous Sampling Differentiates Insulinoma From Nesidioblastosis. J Clin Endocrinol Metab. 2015;100:4189-97. PMID: 26312578.
Nationwide survey of endogenous hyperinsulinemic hypoglycemia in Japan (2017-2018): Congenital hyperinsulinism, insulinoma, non-insulinoma pancreatogenous hypoglycemia syndrome and insulin autoimmune syndrome (Hirata’s disease). J Diabetes Investig. 2020 ;11:554-563. PMID: 31742894.

グルカゴノーマグルカゴノーマに関しての勉強まとめです。...

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総合内科と内分泌代謝科で修行中。日々勉強したことを投稿しています。 皆様の参考になればと思います。役に立ったらシェアをお願いします。間違いがあればご指摘下さい。 臨床に応用する場合は自己責任でお願いします。