バセドウ病に対するヨウ化カリウムは有効な治療だが、無痛性甲状腺炎を起こした症例が最近報告された。
ヨウ化カリウム内服中のバセドウ病に甲状腺中毒症を認めた場合、バセドウ病の再燃だけでなく無痛性甲状腺炎を疑う必要がある。
無痛性甲状腺炎後に寛解を維持しているバセドウ病が多い。
2016年8月から2018年12月にかけてヨウ化カリウム内服中に無痛性甲状腺炎を起こしたバセドウ病患者が11名報告された。10名は抗甲状腺薬による副作用のためヨウ化カリウム内服を開始、1名は妊娠を予定していたためメチマゾールからヨウ化カリウムに変更していた。全ての患者は一過性の甲状腺中毒症を呈し、99mテクネチウムシンチグラフィで取り込みが低下していた。ヨウ化カリウムの内服量は1丸もしくは2丸。TRAbは1例を除き陰性。抗TPO抗体陽性が6例(54.5%)、抗サイログロブリン抗体陽性が10例(90.9%)だった。甲状腺中毒症のときに8名(73%)は有症状で、動悸が最多だった。そのうち4名がβ遮断薬を必要とした。
ヨウ化カリウム開始から無痛性甲状腺炎発症まで平均18.9±14.0ヶ月(2~45ヶ月)。甲状腺中毒症からeuthyroidまでは平均72.7±45.9日。無痛性甲状腺炎後に甲状腺機能低下症になった症例はいなかった。1例のみ無痛性甲状腺炎後49日目にバセドウ病が再燃したが、それ以外の症例は寛解を維持している。妊娠を予定していた1例は無痛性甲状腺炎から回復後に甲状腺全摘術を施行している。
バセドウ病に対するヨウ化カリウムは有効な治療だが、無痛性甲状腺炎を起こすという症例報告が最近発表された。
ヨウ化カリウム内服中のバセドウ病に甲状腺中毒症を認めた場合、バセドウ病の再燃だけでなく無痛性甲状腺炎を疑う必要がある。
無痛性甲状腺炎後に寛解を維持しているバセドウ病が多い。
〈参考文献〉
Clinical Studies on Potassium Iodide-induced Painless Thyroiditis in 11 Graves’ Disease Patients. Intern Med. 2021;60:1675-1680. PMID: 334317331.