ビタミンD依存性くる病は世界に100例程度の稀な遺伝性疾患。
ビタミンD活性化障害のType1、ビタミンD受容体異常のType2、ビタミンD代謝亢進のType3の3種類がある。
生後1,2年でくる病の臨床所見が出現する。Type2は脱毛症を伴う。
ビタミンD依存性くる病は非常に稀な遺伝性疾患で、世界に100例程度の報告しかない。
ビタミンD活性化障害のType1、ビタミンD受容体異常のType2、ビタミンD代謝亢進のType3の3種類がある。
Type1A
1α水酸化酵素の欠損。CYP27B1の変異で起きる。25(OH)VItDから1,25(OH)VitDを生成できなくなりくる病・ビタミンD欠乏となる。1961年に初めて報告された。現在100人以上、72の変異が同定されている。
出生時は正常だが、発育不全・骨格変形・筋力低下・骨痛・こむら返り・低Ca性けいれんを生後1-2年以内に起こす。骨・関節所見として、頭蓋癆・骨幹の肥大・肋軟骨関節の隆起(rachitic rosary)・前方骨膜の閉鎖遅延・Harrison’s grooves・胸郭異常などの奇形がある。
典型例では、栄養性くる病と同様に、低Ca血症、低P血症、ALPとPTHの血清レベルの上昇を認める。低栄養性くる病とは対照的に、25(OH)D値は一般に正常で、1,25(OH)2D値は低値である。尿中Ca排泄は低い。2次性のPTH上昇に伴う高Cl性代謝性アシドーシスを認めることがある。
活性型ビタミンD投与が治療となる。
尿中Ca排泄が4mg/kg/day以上とならないように注意する。
Type1B
25水酸化酵素の欠損。極めて稀な常染色体劣性遺伝の病気。1994年に初めて報告された。4つのCYP2R1変異が報告されている。最も一般的なCYP2R1変異はp.L99P。
低25(OH)Dと低〜正常な1,25(OH)2Dを認める。
カルシトリオールが唯一の治療。
Type2A
1978年に初めて報告された。常染色体劣性遺伝。ビタミン D 受容体(VDR)遺伝子の変異による1,25(OH)2D に対する抵抗性が特徴となる。
通常、乳児期または幼児期に発症する。思春期から成人期まで未診断な軽症例もいる。
臨床所見は、1,25(OH)2Dが高値である以外は、他のくる病と同様。
出生時あるいは乳児期から部分的あるいは全体的な脱毛症を半数以上の患者に認める。
ビタミンD受容体(VDR)にはN末端のDNA結合ドメイン、C末端のリガンド結合ドメイン、その2つのドメインをつなぐ広範囲な非構造化領域の3つで成り立っている。
ビタミンD結合後にビタミンD受容体はレチノイドX受容体α(RXRα)と三次元構造を形成し、ビタミンD制御遺伝子のプロモーター領域でビタミンD応答配列(VDRE)に結合し、転写を開始する。
DNA結合ドメインの変異で機能が完全に失われると脱毛を伴う重篤な臨床像となる。リガンド結合ドメインの変異では通常、VDRの機能が部分的に失われ、脱毛を伴わない軽度の表現型となる。
現在65の変異が報告されている。VDRのいずれかのドメインに影響を与える不活性化変異は、疾患発症につながると考えられる。
遺伝子型と表現型の関係に加え、本疾患の臨床症状は加齢に伴い改善することがある。
思春期の症例では、血清Ca、P、ALPの値が徐々に正常化し、カルシトリオール/カルシウムの治療が不要になる場合もある
腸管からのカルシウム吸収は、思春期終了後にビタミンDに対する依存性が低くなるという機序が想定されている。
25(OH)Dの血清レベルは通常正常。低Ca・低P血症、PTH上昇は、1α水酸化酵素の活性化と24-水酸化酵素の阻害を引き起こす。よって24,25(OH)2Dの低値と1,25(OH)2Dの異常高値(300-1000 pg/mL、正常範囲:15-90 pg/mL)を認める。
推奨される治療は高用量のカルシトリオール(1~6μg/kg/日、2回投与)とカルシウム(1~3g/日)の投与。
脱毛症やDNA結合ドメインのナンセンス変異があると、治療に対する反応性が低い。
Type2B
ホルモン応答エレメント結合タンパク質の異常発現による稀なくる病。
1993年にHewisonらによって、脱毛・骨格異常・Type2Aに関連する生化学的特徴を持つがVDR変異のない患者で初めて報告された。
Type2Aとは対照的に、VDRの機能は正常である。
主な病態は、hnRNPファミリーのメンバーである不均一核リボ核タンパク質(hnRNP)C1、C2タンパク質の過剰発現であり、VDR-RXRヘテロダイマーのVDREへの結合を阻害する。遺伝子検査を行わなければ、VDDR2AとVDDR2Bの鑑別診断はできない。
治療はType2Aと同じ。
Type3
2018年、薬剤代謝酵素CYP3A4の異常によるくる病が、3型として報告された。
本来の代謝酵素である24位水酸化酵素より、活性型変異したCYP3A4によって強力に1α,25(OH)2Dが代謝されるため、ビタミンDに不応となる。
Type1-3の比較
ビタミンD依存性くる病は世界に100例程度の稀な遺伝性疾患。
ビタミンD活性化障害のType1、ビタミンD受容体異常のType2、ビタミンD代謝亢進のType3の3種類がある。
生後1,2年でくる病の臨床所見が出現する。Type2は脱毛症を伴う。
〈参考文献〉
Diagnosis and Management of Vitamin D Dependent Rickets. Front Pediatr. 2020;8:315. PMID: 32596195.
Genetic Causes of Rickets. J Clin Res Pediatr Endocrinol. 2017;9:88-105. PMID: 29280738.
ビタミンD依存症I型,II型 日内会誌 96:737~741,2007