内分泌

先端巨大症の診断の手引き

先端巨大症の診断の手引き

Ⅰ. 主症候 (注1)
 1. 手足の容積の増大
 2. 先端巨大症様顔貌 (眉弓部の膨隆, 鼻・口唇の肥大, 下顎の突出など)
 3. 巨大舌

Ⅱ. 検査所見
 1. 成長ホルモン (GH)分泌の過剰
   血中GH値がブドウ糖75g経口投与で正常域まで抑制されない (注2)
 2. 血中IGF-1 (ソマトメジンC)の高値 (注3)
 3. MRIまたはCTで下垂体腫瘍 (腺腫)の所見を認める (注4)

Ⅲ. 副症候および参考所見
 1. 発汗過多
 2. 頭痛
 3. 視力・視野障害
 4. 月経異常
 5. 睡眠時無呼吸症候群
 6. 耐糖能異常
 7. 高血圧
 8. 不正咬合
 9. 変形性関節症
10. 手根管症候群
11. 頭蓋骨および手足の単純X線の異常 (注5)

【診断基準】
確実例: ⅠのいずれかとⅡのすべてを満たすもの.

(注1) 発病初期例や非典型例では症候が顕著でない場合がある.

(注2) 正常域とは血中GH底値 0.4 ng/ml (現在のGH測定キットはリコンビナントGHに準拠した標準品を用いている. キットによりGH値が異なるため,成長科学協会のキット毎の補正式で補正したGH値で判定する)未満である. 糖尿病, 肝疾患, 腎疾患, 甲状腺機能亢進症, 褐色細胞腫, 低栄養状態, 思春期・青年期では血中GH値が正常域まで抑制されないことがある.また, 本症では血中 GH 値が TRH や LHRH 刺激で増加(奇異性上昇)することや,ブロモクリプチンなどのドパミン作動薬で血中GH値が増加しないことがある.

(注3) 健常者の年齢・性別基準値を参照する(附表). 栄養障害, 肝疾患, 腎疾患, 甲状腺機能低下症, コントロール不良の糖尿病などが合併すると血中IGF-1が高値を示さないことがある.一方, 妊娠後期ではhPLの影響で血中 IGF-1は高値を示すことがある.

(注4) 一般にT1強調Gd造影画像にて, 正常下垂体と比較して造影されにくい病変として認められる. T2強調単純画像にて, 側頭葉灰白質と比較して低信号の場合, 第一世代ソマトスタチンアナログに感受性の高いdensely granulated tumorsが示唆される. トルコ鞍空洞症候群を伴って下垂体に明らかな腫瘍の所見を認めない場合がある. 稀な原因ではあるが異所性 GHRH産生腫瘍の場合には下垂体は過形成の所見を, 異所性GH産生腫瘍の場合には下垂体は低形成の所見を呈する場合がある.

(注5) 頭蓋骨単純X線でトルコ鞍の拡大および破壊, 副鼻腔の拡大, 外後頭隆起の突出, 下顎角の開大と下顎の突出など, 手X線で手指末節骨の花キャベツ様肥大変形, 足X線で足底部軟部組織厚heel padの増大(22mm以上)を認める.

(附)ブドウ糖負荷でGHが正常域に抑制される場合や, 臨床症候が軽微な場合でも, IGF-1が高値の症例は, 画像検査を行い総合的に診断する.

間脳下垂体機能障害と先天性腎性尿崩症および関連疾患の診療ガイドライン 2023年版

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guni
総合内科と内分泌代謝科で修行中。日々勉強したことを投稿しています。 皆様の参考になればと思います。役に立ったらシェアをお願いします。間違いがあればご指摘下さい。 臨床に応用する場合は自己責任でお願いします。